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アニメと本と音楽とチョコレートとお酒の日記
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2024/04/29 (Mon)
帰宅してテレビを付けたら、辻井氏のヴァン・クライバーン・コンクールのドキュメント(?)みたいなのやってました。
クラシックって普段全然聴かないんだけど、思わず聴き入ってしまった…

で、音楽つながりの連想で、結構前からつれづれと考えている“初音ミクってなんなんだろう”っていうところにたどり着く。
形になってから出してみようかと思ってたんですが、だいたいそういうことってもたもたしてるうちにお蔵になっちゃうので、散文的に書いてみようと思います。
ネットのどこかや紙媒体で既に語られていることとおそらく重複してる部分もあると思いますが、そのへんはよしなに。

実は私は、初音ミクの音楽をほとんど聴かない。

ミクに限らず、ボーカロイドの歌全般をほとんどチェックしていない。
私のYou tube上のプレイリストには、150曲ほどが入っているけれど、その中でボーカロイド関連は10曲程度で、そのうちタイトルと歌を一致できているのは5曲程度しかない。

別に、ボーカロイドの歌が嫌いだというわけではない。
たぶん、単にめんどくさいんだと思う。

めんどくさい、というのは、つまり、いい音楽を探すという行為が、だ。

ネットの世界は玉石混合とよく言うけれど、歌だって例外ではない。
その中で、毎日毎日生まれる新しい歌を聴いて、「この歌は好き/嫌い」を判断するというのがめんどくさい。
何せ「好き」と思える歌に会うまでに、おそらくハズレくじ(といってしまうときついかもしれないけれども)を何本か、下手をすれば何十本か引くことになるのだから。

決して自分が音楽通だとは思わないけれど、満足レベルは無駄に高いと自覚している。

どちらかというと、彼女たちの音楽よりも、彼女たちの存在が巻き起こす現象のほうに興味がいってしまう。


以前、ユリイカの特別号で、初音ミクが特集されたことがあった。
サブタイトルは確か『ネットに舞い降りた天使』。
たまたま書店で見つけて、ナナメ読みした。

手元にないので正確な引用は出来ないけれど、その記事の中にこんなものがあった。

「作曲や作詞をしたいと思っている人間が、自分の理想とする歌声に会うことは難しい。そして自分の歌を歌ってもらうのはもっと難しい。
その彼らにとって、自分の歌に声を与えてくれた初音ミクは、天使に見えたに違いない」

折りしも、元2ちゃんねる管理人であったひろゆき氏が新たな媒体となる『ニコニコ動画』を軌道に乗せた頃だった。
数年前とは比較にならないほどの勢いで二次創作をうたうサイトが開設され、受け取る側も発信する側も、プロとアマチュアの意識的な別を必要としなくなっていた。
そしてワールドワイドウェブというインフラは、それらを扱う世代に既に完璧に浸透していた。

彼女の声を得た音楽は、あらゆる機会と土壌を得て、爆発的に広がることになる。


初音ミクのコンセプトは『未来からきた初めての音』なのだそうだ。
だから、初音未来=ミク。
発売当初、このコンセプトワークを聞いて、私はものすごく引きつけられた。

そしてそのコンセプトとは違った形かもしれないが、彼女の声とウェブの網によって広がった音楽は、今まで誰も見たことのない現象を引き起こす。
受け手からのレスポンスなどという温いインタラクティブ・コミュニケーションどころの騒ぎではない。
World Wide Webの名にふさわしい、完全に自由なアクセシビリティと、著作権等の生臭い束縛を一切必要としない環境が可能にした、自発/多発的な相互作用の爆発。

一つの運動に不特定多数が賛同するわけでもなく、一つの対象に引き寄せられるわけでもない。
数多の音楽がそれぞれに多数の人をひきつけ、淘汰され、そして、そこからインスピレーションを得た他の才能が別のものを生み出す。
それはイラストレーションだったり映像だったり物語だったりアレンジだったり、あるいは生身の歌声だったりするのだけど、その生み出されたものからまた新しいものが生み出される。
それが、もはや誰にも把握できない階層を重ねている。


二次創作、三次創作のレベルではない。
あれはオリジナル→二次→三次、というある意味では一方向のトラックだ。本質的に違うと言ってもいいかもしれない。
消費される音楽と揶揄されるJ-POPも、受け手の反応を間近にするインディーズとも違う。
著作権も利権も存在しないからこその、自由意思と才能だけによる変容しながら増殖する音楽。

いつか「インターネットの歴史」というものを編纂するときが来たら、
“初音ミクの登場”は新しいピリオドの始まりとされるかもしれない。

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